石川高専現代GP 第2回河北潟フォーラム派遣報告
材料工学科 浅田 格、 武田 光博
1.第2回河北潟フォーラムについて

図1.石川工業高等専門学校
平成20年2月19日に石川工業高等専門学校専攻科棟講義室で開催された第2回河北潟フォーラムについて報告する。
石川高専は、課題名「郷土愛育成による環境改善教育システム構築」が、平成19年度現代GPに採択された。石川高専のある津幡町および周辺地域とつながりの深い河北潟をテーマとして環境教育システムを構築し、「地域総合型技術者」を育成することを目的としたプログラムである。今回参加した河北潟フォーラムは、本プログラム開始時期である平成19年11月に開催されて以来の第2回目のフォーラムである。
このフォーラムは2部から構成され、第1部は石川高専の概要説明および現代GPの概要説明と取組報告、第2部はこのプログラムの中心となる創造工学演習の報告会が行われた。
2.現代GPの取り組み報告
2.1 石川高専の概要

図2.第2回河北潟フォーラム
開会挨拶に続き石川高専の概要説明が行われた。石川高専は、準学士課程5学科、専攻科2専攻から構成されている。準学士課程の進路状況については、6割の学生が就職を、4割の学生が進学をしている。
準学士課程高学年と専攻科課程からなる創造工学プログラムは、複合工学修得コースと専門工学探究コースに分かれ、前者を選択した学生のみがJABEE資格を取得できる。
専攻科のインターンシップは、9〜11月の3ヶ月間で実施されており、インターンシップ先の企業決定後には、ビジネスマナー研修会、実習担当と学生の打ち合わせ、企業訪問、技術講習会、2回目のビジネスマナー研修会などの事前指導が行われている。インターンシップ中には、教員による巡回指導があり、終了後に行われる報告会には、企業担当者も参加して開催されている。
3ヶ月という長期間のインターンシップも注目されるが、複数回指導を行っているビジネスマナーや企業別の指導打ち合わせなど非常に綿密な事前指導を行っていること、実習報告会に企業担当者が参加していることは、本校の実施形態においても参考としたい事項である。
次に現代GPの概要説明が行われた。石川高専のある石川県河北郡津幡町は能登、金沢、富山への分岐点であり交通の要所として栄えた。またこの地域には、古来より生活との関わりが深い河北潟がある。現在、この潟は昭和の干拓事業により汚染が深刻化しており、また休耕地の有効活用とともに大きな問題に抱えている。
そこで石川高専では、身近な環境改善の対象としてこの河北潟に注目し、これを題材とした環境教育システムの構築を目的としたプログラムが現代GPに採択された。
この現代GPは地域でも高い注目を集めており、地元北国新聞には、水質浄化と歴史を学ぶ「河北潟でふるさと教育」(教育改善と郷土愛をはぐくむ活動の「教材」として河北潟)として紹介されている。
この環境教育システムにより石川高専が育成する人材像を、技術と自然環境・人間環境との調和を図る総合技術者とし、「地域総合型技術者」と命名している。ここでは、3つの目標を掲げている。それは、1.地域への愛着と貢献、2.環境問題を広い視野から解析し解決すること、3.発展内容として問題解決の立案をすることである。
これら3つの目標は、順に学年進行と対応しており、1は準学士課程で「河北潟リテラシー」を学ぶ日本文学や体育などの科目、2と3は専攻科に設定する「創造工学演習I、II」のチームプロジェクト型演習の科目であり、教育効果のスパイラルアップをねらったものである。これらの詳細は後述する。
また、この教育システムの特徴的な点として、環境再生医の初級を取得できる認定校となっていることも挙げられる。
河北潟リテラシーは環境改善教育の根底をなす郷土愛を育成するものと位置づけていて、3つの手法を用いて展開している。「知る」として歴史と日本文学、「学ぶ」として化学、「体験する」として英語と保健体育、これら3つをそれぞれの授業で河北潟リテラシーに関して取り上げている。
文学では、河北潟に関する文学・歴史書「海の百万石」や、河北潟の近代化に活躍した銭屋五兵衛の生涯を紹介した。その結果、学生アンケートでは地域の歴史を知る機会として好評であったと報告された。
化学では、水質汚濁の化学的指標を学び、汚染対策の基本方針を学習している。実際の測量は、創造工学演習などで行っているようである。
英語では環境問題に関する基調講演と留学生のお国事情を発表させている。保健体育では、生涯スポーツの可能性について水上スポーツ実習体験させており、学生は興味をわかせているであろうと想像させる。
これら授業における河北潟リテラシーについて、教員の立場からも意見も述べていた。教師にとっても新鮮であるものの、科目横断的授業では改めて教材開発が重要であることを感じ、素材発掘から教材化することの難しさが挙げられている。教育課程の中での位置づけ、シラバスへの取り込みをいかにするかが、このリテラシーの授業展開の課題のようである。
3.創造工学演習と発表会
現代GPの取組説明に引き続き、創造工学演習IIの発表会が行われた。この発表会は、環境教育プログラムの根幹となる科目で、環境に重点を置いた思想・設計・作製に至る総合的学習の実例発表でもあった。この演習は、グループプロジェクト形式で行われ、1グループの構成員は別々の学科を卒業した4〜5名程度である。そして各科1名の指導教員が1グループの指導に当たっている。
創造工学演習が、この教育システムの中で独創力と技術力を養う中心的役割をなしていることがわかる。発表では、木工沈床設計、太陽電池利用、水質浄化などをプロジェクト課題として取り上げていた。どの発表も成果や進行がみられることから、学生が興味を持って取り組む姿勢が推測できる。現代GPの開始年度でありながら、学生が常に環境への配慮を念頭に置いた活発な取組が感じられた。
4.まとめ
石川高専で行われている現代GP「郷土愛育成による環境改善教育システム構築」は、津幡町周辺地域とつながりの深い河北潟を題材に地域をつながりある環境学習活動を通して、「地域総合型技術者」を目指す環境教育システムとして本校にとって参考となるプロジェクトであった。
課題に対してグループプロジェクト形式で行わせる点は、本校の現代GPで行うグループ型のコンテストと類似したものであり、グループ員の構成や課題演習の実施方法などについて参考となった。
身近な自然環境という地域と密接したテーマを用いて環境問題を取り組ませる形態は、学生の学習意欲を向上させるとともに環境問題に対する責任感を植え付ける大変興味深い事例であった。